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カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫) -組織に入ってる人は心に刻み、組織を知らない人は胸に刻むべき-

書評

 私は、本をよく読む人の中では読まない方に部類しますが、あまり読まない人の中ではかなり読んでいる方だと自負しています。そんな中最近読んだもので興味深く感じる内容だったので私感でご紹介します。

 読書好きの中では一人の著者の作品のみ読む人もいますが、私は著者関係なく本屋で流れるように見つつ、その中でタイトルと表紙で目を止めさせられ裏表紙にあるあらすじで本選びをしています。

 本書の内容は深くは語りません。というのも、本の解説やネタバレなどは探せばいくらでもあると思うのですぐに簡潔な内容を知りたい方はそちらを見ることを推奨します。ここでは読んた私感を述べて最終的に形として皆さんが手に取って読んでくれることを望んでいます。どんな作品でも賛否両論あるのは当然のことだと思います。

カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫)

 表表紙の夜を表した黒背景の中に「カトク 過重労働撲滅特別対策班 」のタイトルが書かれた本に目が止まりました。著者は「新庄 耕」さんという方で個人的に信用があまり無いWikipediaで少し調べさせて頂いたところ、様々な企業経歴を経て小説家になり、現在(2018/11/06)までに4作品の本を書かれた方だそうです。間違っていたらすみません。

 

 「カトク」と称された過重労働撲滅特別対策班というものの存在を本書で初めて知ることができました。2017年に新設されたとまだ新しいものだったのでストーリーを通して実働を知ることができて良かったです。

 

 本書の形式としては、最終的な繋がりはあるものの、いわゆるオムニバスに一つ一つのお話として物語が展開していきます。

 主人公はカトクでブラック企業の実態を無くすべく努めるも、ブラック企業被害社員の厳しい現実と向き合い、悩み奮闘します。

 ブラック企業というものが社会問題化されていますが、その実態はカトクの人すら分からない事情や人間感情のある当事者間でしか知り得ないものではありますが、非常にグレーな問題だと思います。パワハラ、セクハラ、モラハラetc...ハラスメントは挙げてみればいくらでも上がってきますが、人の感じ方一つでいくらでも変わってきます。本書では業績という重圧に押しつぶされそうになる、自身の出世のために部下を酷使する反面家庭に事情を持ち抱える...等といった様々な境遇の人がカトクの対象としてブラック企業捜査が入りますが、本当にこれらの事象が起こっているのかと思うと現代社会は狂ってますね...カトクが実在している以上は本当に世の中に蔓延っているほどの社会問題だなと改めて感じます。

 被害社員の厳しい現実がすごい良くわかると思うのが、必死に得た今の地位を失いたくないという気持ち、今の自分の居場所はここしかないという心理状況です。私もこの状況下に置かれたらどんなに酷使されても「やらなきゃ」と体が悲鳴を上げるまで止まらないと思います。止められないですね。私感で述べると単純に「目上の人が怖い」です。立場や年齢的に上の人間に労働を課せられたら私はまず断ることはできません。断って怒られる、文句を言われることが怖くて仕方ありません。だからこそ上下関係のある会社組織は恐ろしい場所にしか見えないのです。

 「自分がそうやってきたから部下にも同じことをしていい」という考え方も恐ろしいですね。「当時は体罰なんて当たり前だった」「当時は過重労働してなんぼだった」なんてことをニュースで目にしますが、現代でこれらが違法化されているということは、この人たちも立派な被害者なはずなのにどうしてなのでしょうか。子供の頃に「自分がやられて嫌なことは他の人にはするな」と教わらなかったのでしょうか。そうでなくブラックに手を染めることを美徳として語るのであれば愚かでしかないですね。

 カトクなんてものが生まれるまで陰で蔓延していたことはすぐに無くすことは無理だと思いますが、せめて私と同年代の今の若者たちが部下を持った時にブラックな考えを持たないことを望みます。自分たちの子供世代に「ブラックゆとり世代」なんて言われたくないです。

 とはいえ、私はまだ企業に属していないですし、これから属せるのかも分からない状況ですが、現状から逃げて心の安らぎを得れるのであれば、逃げることは大正義だと思います。

 物語はフィクションですが絶妙にリアルな描写が描かれ容易に状況が想像できるので会社に属する部下を持つ人、これからという若手社員、私と同じまだ企業という組織をよく知らない人たち全員が本書を通して現代社会の現状と正しい会社の在り方を知って欲しいです。

カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫)

カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫)